鏡を見なければ自分では解らない位置だが、気分のいいものではなかった。
それが、白狼からの『支配の象徴』のようにも感じられたからだ。

(セキに付けられた“(あかし)”は、そんな風に思えないのに……)

赤い宝石みたいだ、と、感じた当初の自分を思いだす。そう感じたのは、すでに瞳子がセキを憎からず思っていたからだろう。

(同じもの……同じ『儀式(こと)』でも、相手との関係性で自分のとらえ方が変わる……)

それが、つながり───絆というものだろう。

「お前の返答は、解った。では───後悔はすまいな」
「後悔?」
「ひとまず、コレを外せ」

くい、と。組紐に、百合子の神経質そうな細い人差し指が引っかけられる。

「お前と白狼の“証”──つながりを、私の“|神力”で絶ち切ってやろう」
「は? えっ? そんなこと……」

できるのか、と、問いかけた瞳子に向かい、百合子が妖艶に微笑む。美しいが、どこか傲慢(ごうまん)なほどに危うさを秘めたもの。

「私を、誰だと思っている?
『死と破壊』を司る“神獣”の“花嫁”だぞ。お前が望むなら、可能だ。白狼との悪縁を『壊す』こともな」
「お願いします!」

瞳子は百合子の言葉に一も二も無く、組紐を外した。願ってもないことだった。

そうして、気づく。