「なんかね、“神獣”には“神獣”の、自分にふさわしい“花嫁”が『匂い』で解るんだって。
直感とかひとめ惚れともいうみたいだけど」
「あ……セキがそんなようなことを言ってたかも……」

やっぱり! と、咲耶は納得したように笑う。瞳子のほうへ手を伸ばし、ぎゅっと瞳子の両手をにぎった。

「だから……私から瞳子さんに言えることは、ひとつだけ。
“神獣”としてのセキくんはもちろんだけど、『セキくん』っていうひとつの(こころ)に、寄り添ってあげること。それが、“花嫁”の存在意義だと思う」

咲耶のその返答は、瞳子の胸にすとんと落ちるものだった。瞳子がセキに感じていた『想い』を、“花嫁”としての『先輩』が言葉にしてくれた。

「……分かった。ありがとう、教えてくれて」

ふふっと、咲耶がいたずらっぽく笑う。

「ね、そんな堅苦しい話より、せっかくだし私たちだけでしかできない話、しない?」
「あ。じゃあ……ちょっと個人的な興味というか……気になってたことというか……。
犬貴さんのこととか」
「あはは、犬貴かぁ……フツーに格好良いよね」
「だよね! だから、セキには言えないけど、目覚めて居なかったの、少しガッカリしたというか……」