「あの……“花嫁”って、具体的にどうしたらいいのかな? “役割”があることとか“神獣”に真名(なまえ)を伝えるっていうのは、セキからある程度聞いてはいるんだけど……」

心構えというのだろうか? どういう立ち位置でいていいのかが、正直よく解らない。
瞳子の疑問に、咲耶がうなずいた。

「ああ……そうだよね。うん、その部分は、私も未だに手探りかな」
「……咲耶さん、コッチに来てから五十年経つって言ってたのに?」
「だからこそ、かもしれない。
さっきも言ったけど、外見が変わらないって、思った以上に対人関係がちょっと特殊になるというか……」

神籍(しんせき)”に入ると、歳をとらない。
病にはかかりにくいし、免疫力も治癒力も「人」であった時より格段に上がる。そして───。

「自分より若かった人が、自分の年齢を超えていって……歳をとって。お別れもしなきゃ、ならなかったりとか、ね」
「ああ……」

瞳子にはまだ実感がわかないが、“神籍”に入るということは、「人でなくなること」と同義なのだと咲耶のその言葉に改めて気づかされる。

(親しい人を、見送った経験があるってことだよね)