「ああ……、初対面の方とは、なんとなく敬語で話すのがクセで……」
「うん、解る……実は私もそう……。
でも! ここは思いきって、見た目年齢、変わらないし!」

しみじみとうなずきながらも、咲耶はそこで両手を打ち鳴らし、瞳子を窺い見てくる。そのしぐさが可愛らしく親しみやすさを感じ、瞳子は笑った。

「じゃあ……咲耶さん。
改めて、ありがとう。あと、いろいろコッチのこと教えてもらえると、助かる」
「もちろん! たぶん、セキくんはそういう意味もあって、私にしばらくこのお屋敷に残ってくれって言ったと思うし」
「セキが……」

この世界について、瞳子はまだ、ほとんどのことを知らない。
都度、セキやイチに教えてもらうつもりではいるが、同じ世界の『出身』である咲耶になら、瞳子が疑問に思うあれこれを察してもらえるのではないだろうか?
きっとセキも、瞳子が心をひらきやすいのではと考えたに違いない。

(やっぱり、セキは優しいな)

当たり前の優しさを当たり前に供せる者は、実際は少ない。そして、思い返せば、最初からセキは『優しい人』だった。

(『人』じゃないけど。『神サマ』だけど)