《十一》


しばらく留守にする、とセキに言われたものの、まさかこんな状況になっているとは思わなかった。

「お加減は、どうですか? 瞳子さん」

もう少し休め、と言い残して立ち去ったセキに甘え、ひと眠りしてから桔梗に聞いてやってきた客間。

瞳子は改めて、隣国の白い“神獣”の“花嫁”に対し、両手をつき頭を下げた。

「わざわざこちらに出向いていただいたようで……ご迷惑をおかけしました。おかげ様でこの通り、元気になりました」
「そんなっ……、同じ“花嫁”同士なんだし、もっと気楽に話しません?」

咲耶のうわずった声が、頭上から落ちてくる。
心の底から恐縮している感が伝わってきて、瞳子は少しホッとしながら顔を上げた。

(だって、セキの感じからするとすごい『偉い人』っぽくて)

あのかしこまり方は、この“陽ノ元”において『格上』の相手としか思えない。

(私の『不調』も治してくれたみたいだし)

本当の意味で『神様』のような存在なのだろう。そう思って、瞳子は言葉を選びながら口をひらく。

「ええと……では、咲耶様───」
「さん、のほうが、いいかな? ……って、敬語もなしで」