「……コクのじいさ───いえ、コク様、百合様。ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません。
ですが、力を貸して欲しいというのは、紛れもなく私の願いです」

気が利くようで利かない、兄のような存在であるイチの、もはや嫌がらせに近いお膳立てはこの際、脇に置き。
セキは、探すのは困難と決めつけていたふたりの登場に、心の底から感謝する。

「私のためにここまで来てくださり、ありがとうございます」
「……なに、コタ坊───いまは赤狼か。おぬしが本来あるべき存在(モノ)として生きると決めたのなら、わしも百合も、助力は惜しまぬよ。
……大きゅうなったな、コタ坊」

頭を下げるセキの肩口に、ポン、と、伸ばされ叩かれた闘十郎の片手が、あたたかい。
その事実に嬉しくなりつつも、セキはあえての軽口を返す。

「……最後にコク様にお会いしたのは、約一年前だったかと。コク様が縮まれてしまったのでは?」
「はは、わしはおぬしと違い、化身を覚え早くに百合とめぐり()うたからの。背が伸びぬのも仕方あるまい」

そんなセキの胸中に応えるように、闘十郎の返答も気安い。
そして、己の伴侶と旧知の犬の“眷属”を見やって言った。

「では、セキの『祝い』に参るとするかのう」