「なんか……すごい、大事になっちゃってる? 私、あのあと、どのくらい寝てた?」
「……三日ほどだ」
「そんなに!? 私、こう見えて結構丈夫なんだけどな。……みんなにもアンタにも、迷惑かけちゃったね、ごめん」

すっかり良くなった顔色で、布団の端をつかんだ瞳子が居心地悪そうに肩をすくめた。
その可愛らしい仕草に心を奪われつつも、セキは謝罪を口にする。

「……すまない。瞳子が倒れたのは、俺の考えが至らなかったせいだ」
「え?」

セキは、生命力の偏りによって起こった瞳子の症状であったことを包み隠さず話す。
自分が瞳子を“花嫁”にと望まなければ、及ぶことのなかったはずの事態だということも。

「───アンタは私を助けるつもりで、私を“花嫁”にしてくれたんだよね?」
「そうだ。だが、他に方法もあったはずなんだ。イチが、いたんだから」

“神獣ノ里”に(ゆかり)のある神だ。(くに)ツ神である“神獣”よりも高位にある(あま)ツ神に、本来なら属するモノ。
その神を味方につければ、瞳子を自分の“花嫁”にせずとも、うまく助けてやれたかもしれないのだ。例え、時間がかかったとしても。

「……でも、私を自分の“花嫁”にした。それは、なんで?」

瞳子の眼の奥に、苛立ちが見えた。それは、そうだ。セキがこのいらぬ運命(さだめ)に瞳子を巻き込んでしまったのだから。