「───気分は、どうだ?」
「少しぼうっとするけど……たぶん、大丈……」

言いながら瞳子は、部屋に集まった面面に気づいたらしく、ぎょっとして部屋を見回した。

「えっ! なに、この状況っ───」

文字通り、病み上がりの身のためか、瞳子はそこでめまいに襲われたようで、セキは彼女を横たえながら説明をする。

「瞳子の身体が回復したら、また改めて詳しいことは話すが───隣国の白い“神獣”白虎様とその“花嫁”咲耶様に来ていただいた。
……あちらは咲耶様たちの“眷属”犬貴殿だ」

瞳子の目が一番輝いて見えた視線の行方。複雑な心境になりながら紹介をするセキに、咲耶が口をひらく。

「私たちがいたら瞳子さん、ゆっくりできないよね。……お(いとま)しよっか?」
「───おそれながら、咲耶様、白虎様。よろしければ、客間にお通しいたしますので、ひとまずそちらに」

気を利かせてくれた桔梗と視線を交わし、セキも、早くも帰ろうとする咲耶たちを引き止める。

「ご迷惑でなければ、いま一時(ひととき)のご滞在を願えればと存じます、……咲耶様」

セキの眼差しの意味に何かをさとったのか。はたまた、幼い頃を知るなじみのためか。
咲耶はセキの懇願にうなずき、自らの伴侶と下僕を連れ、瞳子の部屋をあとにした。
それに引き続き、イチがふうを連れて立ち去ると、瞳子は大きく息をつく。