サッ……と、気色ばむ獣人らを前に、セキは腰にある剣に手を伸ばす。

疾風が吹き抜け、弾かれたようにセキの片手に痛みが走る───が、構わずにその手でもって、つかんだ剣の腰紐を解き、差し出そうとした。
目の前にいる、黒虎毛の犬へと。

「こちらは、貴殿に───」
預ける、と、セキが告げようとした、その時。

「犬貴、犬朗! この人に、手を出しちゃダメ!」

セキをかばうように立ち塞がる人影が、突如として現れたのだった。