意識が朦朧(もうろう)とするなか、セキの声だけが、瞳子の耳に心地よく響く。

「ご覧の通り、繊細な心根の“花嫁”には、今宵の白狼殿らからの禍言(まがこと)の数々、心身をひどく傷つける『毒』であったようだ。
我らはこれで失礼するが、構わぬだろうな?」
「あー……そうだねぇ。天女様も随分とお疲れのようだし。
あ、帰りは私が手を貸さずとも現世(うつしよ)に戻れるはずだよ?」
「相分かった。───イチ、頼む」
「承知しました」

……瞳子が覚えているのは、イチの了承の声。
そこまでで、そのあとは闇───意識の喪失、であった。