(……一人ずつしか、本殿に向かえないって)

輝玄が放った言葉に、困惑をかかえる瞳子の前で、セキとイチが声を荒らげた。

「どういうことだ? 貴殿がこの国の“大神社”を管理しているのは知っているが、それにしても筋が通らないだろう」
「霊力とおっしゃいますが、それは、貴方のものだけでなく、我らの霊力(ちから)を利用すればよろしいのでは?」

───輝玄の説明では、祭壇に置かれた水晶玉を媒介にして、海中の“大神社”へと行けるらしいのだが。
それには水晶玉───正式名称は『豊月海(とよつきみ)(たま)』というらしい───の継承者である穂高家の者、この場合、輝玄だが、彼の持つ霊力によって“大神社”への入口が開かれるという。
つまり輝玄が『豊月海の珠』の媒介者であり──媒介の媒介となるのだ。

「んー……それは、高度な次元の話だねぇ。
君たちのような『神サマ』であれば、それも可能だろう。が、私は只人に毛が生えた程度の霊力の持ち主でね。
しいていえば、この珠と社の管理をする者でしかないのさ。
【社の入口にある扉】の【珠という鍵】を持つ者で、そしてその【鍵穴の位置】を知っているに過ぎない。
もちろん、君たちが【鍵穴の位置】を探り当てることは可能だろうね。何しろ『神サマ』であられるのだから。

ただ」