理解が追いつかない、となった瞳子を察したように、セキが話をまとめた。

「とにかく、この国の“大神社”が“下総(しもうさ)ノ国”と違うのは、地上にあるか海中にあるかだけで、瞳子の身に危険はないから安心してくれ」
「……ただし、ハク様や“神官長”が何も仕掛けて来ない場合に限って、ですがね」

ボソッと付け加えられたイチの一言に、瞳子は“赤比礼”を渡された時のことを思いだす。

「セキ様の“眷属(けんぞく)”が私しかいない現状では、貴女の御身を護るにも限界がありますからね。
これは、その役割を担う“眷属”に匹敵する肩巾(かたかけ)だと、とらえていただければ幸いです」

と、イチは言っていた。

(見えないけど、触って身に着けさせられた感じは、ストールっぽいんだよね)

「おーい。そろそろ天女様へのご講義は終わりそうかーい?
ハク殿たちを気にかけていたのは、私の天女様への拝謁を、邪魔したかっただけなのかと疑ってしまうよー?」

輝玄の気の抜けた横槍(よこやり)に、セキとイチの舌打ちが重なる。

「いま、そちらに参りますよっ!
……では、よろしいですかね、瞳子サマ?」

イチが瞳子の意思を確認するように見据えてくる。

「大丈夫。行けるわ」

その先にいる、白い“神獣”の存在を気にかけながらも、瞳子は意を決してうなずいた。
───の、だが。