仮に息ができても潮水のなかでの会話は難しいのでは? と、真剣に疑問に思う瞳子に対し、セキとイチが同時に噴きだした。

「いえ、この国の“大神社”は現世(うつしよ)にありながら常世(とこよ)にあるという場所なのです。

所在は海中ですが、地上と同様に過ごせるよう、創られていると聞き及んでおります。
特殊な“結界”に囲まれているとも聞きますし、確かに只人ではたどり着くのが難しく、一定の霊力もなければ、息もできないのかもしれませんね」

最後の付け足しが若干 瞳子をからかっているようにも思えたが。
イチの説明に、なんとなく納得しつつも、瞳子は言葉を重ねた。

「私って……その、霊力? あるの? 実感ないけど」
「ああ、そうか。確かに『人』からすると、不思議に感じるのかもしれないが……。
瞳子にはすでに、只人にはない『生命力』が備わっている。霊力とは魂の強さと同じだからな」

(そういえば、最初の頃、ふうにもそんなこと言われたな)

瞳子の身体から、すごい“気”を感じる、と。 

「それは、私が“神籍”に入ったからって、こと?」
「そうです。貴女の魂がセキ様───という“神獣”の加護を受けている状態だからです」

一瞬、何かを言いよどんだイチの補足に、瞳子は頭を悩ませる。

(うーん……解ったような、余計にややこしくなったような)