ありのままの弱い女の身でいても、護ってくれる存在がいると感じられたのは、こそばゆいと同時に安心も得られた。
だからこそ、瞳子しか知らないというセキの真名を、本人に伝えられたらいいと、心から願う。

(伝える手段がアレなのはアレだけど……すぐにってわけじゃないし)

セキへの想いを自覚した以上、瞳子としても難しい『伝え方』ではない……はずだ。

(意識すると気恥ずかしいけど、多分、大丈夫!)

逆に、それでセキに真名を伝えられるのなら、本望だ。
瞳子はそう決意を固めると、イチをまっすぐに見て言った。

「昨日も話したけど……やっぱり私、もう一度、こっちに戻って来たいの。セキに……本当の名前、教えてあげたいから」

そんな瞳子に対し、イチはかろうじてそれと分かるような微笑みを浮かべてみせる。

「───承知いたしました。
では私も、昨日お話しした通り、貴女の意志に従い、貴女が無事にこちらに戻って来れるよう、尽力いたします」

イチの協力もあるなら心強いと、瞳子は喜びと安堵(あんど)で胸がいっぱいになり、頭を下げる。

「ありがとう! よろしくお願いします!」

すると、気のせいかもしれないが、イチがとまどったような反応を示した。