「いいですか? 実緒殿のことはさておき、貴方、下手に瞳子サマと距離なんか置いてみなさい。嫌われますからね!」
「は? なんで瞳子が……」
「──酷い。セキったら、私のこともてあそんだのね。あんたなんか、もう知らない! ……って、なりますよ?」

急にしなをつくり声色を変えて言ったかと思うと、セキに指を突きつけてくる。

「いいですね? 私は忠告して差し上げましたからね!」

ふんっ、と、いつもより盛大に鼻を鳴らし、イチはセキの部屋を出て行った。
あとに残されたセキは、頭を抱えてしまう。

(アイツ……言い捨てかよ……)

けれども、瞳子が元の世界に帰りたいと思ってる以上、セキとしては距離を置くしかない。それほどに、自分が瞳子を求めているのを実感しているからだ。

(普通に、触れたくなるだろう)

セキに対して何も特別な感情を向けてない状態ですら、あの可愛らしさだったのだ。想いを向けられて、何もせずにいられるわけがない。

(ある意味、これがオレの“神獣”としての試練なのか……)

寝返りをうちながら、セキは自分に課せられたものの意味を考え、溜息をつかずにはいられなかった。