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「だからぁ、そんな面倒なコト、主任に全部、押しつけちゃえば〜?」

休憩室と続き部屋となっている女子更衣室。
その扉の前でノックをしかけた瞳子の右手が、止まる。

「けどさ、あんまり月島(つきしま)センパイに押しつけちゃって、逆にストレス感じて辞めます~とかなったら、その方がウチらにとってメンドくない?」

「えぇ〜? あの人、そんなタマかなぁ?」

「言えてる! しぶとく居座ってそう! ってゆーか、主任て何歳(いくつ)よ?」

「三十は越えてるって、パートのおばちゃん達が噂してたよ」

「マジで? 美人かもだけど、アノ顔、若いんだか老けてんだかナゾ過ぎでしょ!」

きゃははと甲高く笑う声を背中で聞きながら、瞳子はふたたび売り場の方へと足を向けた。

(悪かったわね! 三十越えてて!)

バンッ、と、資材棚の扉を叩きつけるように閉め、瞳子は胸中で吠える。

レジ周りの備品の補充など、明日やっても間に合う仕事だ。

だが、陰口をいう若い同僚たちの輪のなかに、堂々と入っていく勇気が瞳子にはなかった。

面と向かって言えない文句を、備品に当たり散らすのが関の山だ。

そんなみじめな自分を、閉店後のショッピングセンター内の薄明かりが、あざ笑うかのように照らしていた。