瞳子は、自分がしていることの羞恥心からか、頬どころか夜着の合わせから覗く素肌さえも淡く染めている。
その、セキの視界にすら訴えかけてくる瞳子のなまめかしい姿に、めまいがした。

(試すって……オレのなけなしの理性か! 良心か! まったく、なんの試練なんだ、コレ……)

確かに、“花嫁”が“神獣”に真名(なまえ)を伝えることは、双方にとっての『試練』だとはイチから聞かされていた。
が。

(いや、試練ってのは、その前段階の話だろう!)

赤い“神獣”の“花嫁”が真名を伝える手段が、二人が(ねや)を共にすることなのは、他の“神獣”に比べれば簡単な方法だとイチは言っていた。

しかし、手段は簡単であっても、他の“神獣”同様、そこには双方の確かな『(きずな)』が……要するに『気持ち』がなければ、意味がない。

(意味がないどころか……実際に行えば鬼畜の為せる業だ)

瞳子の気持ちはありがたいが、純潔と引き換えに得られるものは、何もない。
万が一、セキに真名が【伝わったとしても】瞳子が失うもののほうが大きい。

「瞳子の『気持ち』はありがたいが、ソレは駄目だ」
(据え膳断らざるを得ない状況とか……ホントに何の修業だ)