「アンタの言い方。実緒さんや虎次郎さんに対する態度と一緒だし。気安い間柄に思えたんだけど?」

「いや、じーさん……祖父とは、いろいろあってだな……って。そんなことより、瞳子、俺のいない間に何かあったのか?」

(またイチがつまらないこと言って、瞳子を傷つけたりしてないだろうな)

己の口うるさい従者の悪気のない、だからこそ(たち)が悪い物言いを鑑みて()くも、瞳子は話をはぐらかすように視線をそらす。

「ああ、うん。ちょっとだけ。……あとで、いろいろ試させてもらおうかなって、考えてたトコ」

「試す……?」

「───はいはいはい! そこまで!
しつこいようですが、まずはセキ様の屋敷に戻ってから、今後の話を進めましょうかね」

イチがふたたび割って入る形となり、結局セキは、瞳子の言葉の真意を訊けぬままとなってしまった。



(……いや、これ絶対おかしいだろう)

高灯台の明かりが照らす室内。
目の前には、夜着に身をつつみ端座する瞳子。嫌でも視界の隅に入るのは、自らの(しとね)

いまは、人が眠りに就く(とき)だ。

「あのっ……夜分に押しかけて、すごく非常識なのは解ってるけど、でも! その、あんまり時間もないし」