のどの奥で笑い、そうセキに(うそぶ)く尊臣に、内心で毒を吐く。

(殺しても死にそうにない妖怪ジジイの癖しやがって、よく言う)

「……一日も早く貴方へお返しできるよう、精進いたします」

そうしてセキは、未完成な“神獣(じぶん)”を補完するための剣を手に一礼をし、その場を立ち去った。



「瞳子! イチ! 待たせた、な……」

二人が待つ境内へと足早に向かい、遠くから声をかける。
が、セキがその場に居合わせたとたん、こちらに背を向けた瞳子が、ビクッと肩を震わせたのが気になった。

(なんだ? いまの反応は)

「やはり、突き返されましたか」

セキの姿を見てとり、イチが事もなげに言った。それにうなずき、溜息を返す。

「まぁな。あのジジイ、昔からワケ知り顔で好き勝手言いやがって───」

そこで、セキはあわてて言葉を止めた。

(マズい。瞳子の前だった……)

自身の下品な言葉遣いを省み瞳子を見ると、彼女はさほど気にした様子もなく、セキの腰を指差した。

「それ、返さなくてよくなったの?」

「ん? ああ。俺にはまだ必要だろうと言われた」

「そう。……思ったより、良い人なのかな?」

「は? いや、アレは誰がどう見ても妖怪ジジイ……」

邪気の無い言葉に思わず声が裏返ったが、そんなセキに対し、瞳子はクスッと笑い返した。