探るようにイチを見れば、いつもの小馬鹿にした表情ではなく真剣な顔で見返される。

「それは我儘(わがまま)というよりは、人としての貴女の在り方の問題でしょうね。……少し、貴女の見方を変えたほうが良さそうですね」

つぶやくように付け加えると、イチはその眼差しを強め、瞳子を見た。

「解りました。貴女がそういう考えをお持ちなら、私もできうる限り協力いたします。貴女のお気持ちに添うように」

「……セキには、言わないでいてくれるって、こと?」

「貴女がはっきりと決断されたのなら伝えてもいいですが、まだ決めかねているのでしょう?」

瞳子が言葉につまると、例のごとくイチは鼻を鳴らした。

「不確かなことを言って、あの方を一喜一憂させたくないというのが建前。本音は、度々ご忠告申し上げている私を(ないがし)ろにするあの方へ、ちょっと意趣返しもしたいってところですかね」

(……従者愛が重いうえにゆがんでる……)

内心、そんなことを思いつつ、瞳子は話題を変えようとイチの胸もとを指した。

「ねぇ。ふうは、そこ?」
「は? いえ、ここにはいませんよ」
「ハァ!?」

てっきり一緒にいるとばかり思っていた瞳子は、怒り半分あきれ半分でイチをにらんだ。