「何よ、その反応。人が本心をさらけだしたのに、失礼じゃない?」

「あー……すみませんねぇ。まさか私が一日居ないだけで、貴女がセキ様にそこまで想い入れされてるとは予想外で……。
いえ、貴女を責めてる訳ではなくてですね、あの方の人たらしっぷりに心底驚いたというかなんというか……」

ちら、と、瞳子をもう一度見て、深く息をつく。

「……半月どころか、二日ですか」

「何それ、どういう意味?」

「いえ、こちらの話です。
で? 決めかねているのは、こちらの世界に馴染(なじ)みがないからだけですか?」

「それももちろんだけど……私にも、向こうの世界での暮らしがあったの。そりゃ、親も兄弟もいないし、彼氏もいなかったけど」

言いながら、瞳子はゆうべのセキを思いだす。萩原家の者たちへ、決然とした挨拶をした彼を。

「昨日のセキを見て、私もきちんとしたいなって思ったの。その、いろんなもの投げ出した状態でこっちに留まるのって、なんか、居心地悪そうって、思えて」

「けじめをつけたいということですか?」

「そういうことになるのかな?
でも……元の世界に戻って、またこの世界に戻って来たいだなんて……私の、ワガママだよね?」