例え“花嫁”様が性格の悪い気に食わない方でも“(あるじ)”であるセキ様が共に在りたいと願うなら、その願いが叶うよう、力を尽くすのが務めですから」

(何気にディスられたうえに、従者愛が重い)

イチのセキへの想いに若干引きつつも、瞳子は自らが抱えた胸のうちを、この従者になら話してもいいのかも知れないと思った。

(セキのことを大事に想っているイチになら、打ち明けてもいいのかも)

セキの気持ちは素直に嬉しい。何より、信頼に足る人物だと思える。人となりも、嫌いではない。……いや、好きだ。

(でも……でも、なんだよ)

好きという理由だけで、安易にセキの想いにうなずけるほど、瞳子は若くなかった。

この世界については、知らないことが多すぎて。それを無視してセキの側にいると決めるには、無謀すぎる気がした。

「私……この“陽ノ元”って世界のこと、あまりよく解ってないし」

「そんなもの、これから私なりセキ様なりに教わればいいことでしょう」

「……教えてくれるの? 私、あんた達が当たり前に知ってること何も知らないのに、面倒じゃない?」

「貴女に教わる気があるのなら、いくらでもお教えしますよ」