恥ずかしさのあまり興奮して問いかけると、イチは鼻を鳴らした。

「私を覗き趣味の変態みたいに言わないで欲しいですね。
で? 元の世界に帰るのは止めて、こちらに残る気になりましたか?」

「なんでそうなるのよ!?」

「そういう話をセキ様とされていたのでは?」

「それは……」

自分が返答に詰まっていたところを見られていたのだ。
気まずさと、セキにすら告げていない自身の想いをかかえ、何も言えなくなってしまう。

「……別に、貴女を責めてはいませんよ」

そんな瞳子に対し、イチが短く息をついてみせた。

「意外に思うかもしれませんが───貴女が“陽ノ元”に残るというのなら、歓迎いたします」

「ウソっ……! だって、あんた私のこと嫌いでしょ?」

「私が貴女を好きになる必要がありますか? 仮に、貴女がこの世界に留まるとして」

あっさりと返された言葉に、瞳子は複雑な心境となる。イチのいうことは最もだ。最もだが。

(それ、本人に言う必要ある?)

ムッとする瞳子の前で、イチのあごの先がうわ向く。

「私にとっての一番は、セキ様ですからね。あの方が幸せなら、私の感情などどうでもいいことです。