(まぁ……カッコ悪いとか言ってらんねーか)

このまま何もせず、瞳子を元の世界に帰すのは、あまりにも自分を偽りすぎるというものだろう。

“神獣”として生きると決めたなら、なおのこと。
自ら選んだ“花嫁”をただ手放すのであれば、選んだことさえ無駄になる。

(あがくだけ、あがいてみるか)

それが一番自分らしいと、セキは己の心に刻みこんだ。



由良に(いとま)乞いをし、妙子に後を頼むと、セキは瞳子を連れながら“大神社”の本殿のほうへ足を進めた。

「アンタのお母様、素敵な人ね。……アンタがマザコンみたいになるの、ちょっと解る」

ふふっと笑って告げる瞳子に、内心「混ざ紺とは?」と疑問に思いつつも口にはせず、この先の目的を告げた。

「これから俺は、祖父に“神逐(かむや)らいの(つるぎ)”を返しに行ってくるつもりだ。
虎次郎に受け取りを拒まれた以上、前の持ち主である祖父に返すのが筋だろうからな」

「それ、私は同席しなくていいの? おじい様にご挨拶とか」

「あー……うん。本来なら、な。
ただ、あの人は“花嫁”に対しての扱いが酷くてな。瞳子に、不快な思いはさせたくない」