それを見て、あわてて間に入ろうとするも、虎次郎に先を越された。

「実緒。瞳子様が驚かれている。手を離せ」

次いで、真剣な眼差しを向けられる。

「兄上。“神逐(かむや)らいの(つるぎ)”のことですが」

「ああ、すまない。これは、お前に───」

「いえ、結構です。私に剣の心得もなければ、霊などを()る力もないこともご存じでしょう?」

「確かにそれはそうだが……」

その昔、三人で肝試しをした時も、実緒が泣き叫び『虎太郎』が(あやかし)と対峙するなか、一人ぽかんとしていた姿が思い返される。

「ですので、どうぞそのままお持ちください」
「仮にも『神剣』だぞ? 手元に置いて、お前の護り刀としてもいいだろう」

萩原家のものだ、と、譲れない思いで虎次郎へ引き継ぎを申し出る。

ところが、
「そうですね、そこまで言うのであれば……」
と、虎次郎は含み笑いで言った。

「どうぞ“大神社(おおかむやしろ)”に、奉納なさってください」

そこに、厄介な人物がいることを知っていて、セキに託したのは、疑いようもなかった。



夜の静寂(しじま)を破るように、カッカッ……と、木枠を削るような音がした。

「……イチか?」