違うのですか? と、首を傾げるセツ。

瞳子はうつむいて、こめかみをもみほぐした。
……いったい、この少女は何を言っているのだろうか。

(ってか、姫様呼びされるのに順応してしまってる自分が、なんかイヤ)

「気分は、どうですか?」

聞き覚えのある男の声音に、瞳子はハッとして顔を上げる。

腰まで届く銀色の髪と青みがかった灰色の瞳。
人間離れした、その美貌(びぼう)

典型的な日本家屋の造りでは鴨居(かもい)に頭がつかえてしまう長身を折り、微笑みを浮かべ瞳子を見下ろしていた。

(……はぁ!?)

自分が、瞳子にした所業を一切恥じることのない態度に、瞳子は怒りのあまり、目から火花が出そうな心地で男をにらみつける。

「あんた、自分がしたこと解ってんの!? このっ、恥知らずッ!!」

勢いに任せ叫びながらも、瞳子は自分で自分の身体を抱きしめる。

小刻みに震え出す身体は、自らの意思では止められない。
激情と恥辱(ちじょく)に支配され、己の身が真っ二つになりそうだった。

そんな瞳子の様子を、遠巻きに見つめる女達に目配せをし下がらせると、男は瞳子の前に座した。