《七》

「夜分に集まってもらって、すまない。
長く留守を任せ、皆にはもちろん、尊仁にも実緒にも迷惑をかけたな。
俺の不徳の致すところであった。重ねて、()びる」

言って、虎太郎が頭を下げるも、広間に集まった下男や侍女、家臣一同の不愉快さを隠しもしない溜息が、あちらこちらで漏れ聞こえた。

(まぁ、当然の反応だな)

内心の自嘲を(おもて)には出さず、虎太郎は顔を上げた。

(ゆえ)あって、今日(こんにち)まで俺の出自を公言しなかったこと。
それが、お前たちの間で大いなる不審を生み、混乱を招いたことと思うが……それを、今宵(こよい)明かす」

やはりあの噂は……、と、ささやき声のやり取りが、集まった者たちの間に広まった。

幼い虎太郎が突然 現れた日のことについては、当時を知る者らの間から(まこと)しやかな噂となり、必然この場にいる者 全員に伝わる結果となった。
───虎太郎が、先々代の当主・尊臣の遅くに生まれた庶子だというものだ。

虎太郎は、己の隣に控えた瞳子を振り返った。
前もって話はしていたが、やはり、この雰囲気にのまれてか、強張った顔をしていた。
そんな瞳子の緊張をほぐそうと笑ってみせてから、そのひざ上に置かれた手の甲に触れる。