おそらく、結婚に対する価値観が違うのだろう。

婚姻が、本人達の意思よりも、周りの者達の思惑や家長制度の存続のためにあるということなのかも知れない。

(でも、この考え方は、なんかイヤだわ)

たとえ最初の形はどうであれ、縁あって夫婦となったのならば、もっと寄り添い合ってもいいのではないか、と。

セキの物言いに、瞳子は反発心を覚え、また、そんな彼に対し失望したのも事実だった。

「それ、実緒さんに失礼じゃない?」

瞳子は恥ずかしさも忘れてセキを見た。やるせなさのにじむ表情が、返される。

「ああ、誠実じゃなかったと言われれば、その通りだな。
俺は結局、人としても“神獣”としても、実緒とは向き合わなかったからな。
虎次郎の想い人とはいえ、夫婦としての(えにし)を結んだのなら、もっと別のやり方もあったのかも知れない」

(だからアンタはずるい男なのよっ……)

瞳子は唇をかみしめた。
あっさりと非を認めるセキに、これ以上の糾弾をできないことを悟ったからだ。

「本来なら、実緒との間に子をもうけるのも務めだと、割り切るべきだったが……。
どうだろう、単純に、怖かったのかもしれない」

「……何が?」