押し返した手の力が、ふいに行き場を失った。
あっさりと身を引いたセキに、瞳子は自分が抱えた想いを持て余してしまう。

思わずセキを見返すと、彼もまた瞳子を見つめていた。

「瞳子。その顔は、なんだ」

困ったように笑ってみせるセキに、瞳子は自らの顔を確かめようと両手でなぞる。

「顔? 私、そんな変な顔してる?」
「まぁ変といえば、変だ。俺からしたら、予想外の顔だからな。……目の毒だ」

最後はつぶやくように言い、セキは瞳子から距離を置くように、先ほどより離れた位置で座り直す。

(それは……つまり、私はそんな解りやすい顔でセキを見てたと、そういうこと?)

指摘された意味に恥ずかしさも倍増して、思いきり瞳子は下を向く。
まともに、セキの顔が見られない。

「その……実緒さんとは、アンタが“神獣”だから、別れたの……?」

それでも、何かを言わないと堪えられない空気に、瞳子は無理やり口をひらく。

(そうよ。嫌いで別れた訳じゃないなら、なんかこう……私が“花嫁”って、申し訳なく感じるじゃない)