こぼれ落ちた、自分のために流された涙に指を伸ばし、そっとぬぐった。
抑えきれぬ想いを胸にかろうじて留め、瞳子に告げる。

「すまない、瞳子。いまだけ……(ゆる)してくれ」

頬に伸ばした手を、今度は彼女の背中に回す。自らに引き寄せ、腕のなかに、つつみこむ。

『虎太郎』となり手に入れた剣よりも。
“神獣”となり出逢えた、かけがえのない“花嫁”という名の存在(たから)を、せめてこの時だけは、抱えていたかった。