「ああ。なぜなら、神をも追い払えるという名をもち、実際、斬りつけられれば神のもつ力でも再生不可能、死に至らしめることができるからだ。

“神獣”の肉体である“神の器”も、“神獣”の魂とされる“核”も、傷つけることが可能な剣……それが、“神逐らいの剣”なんだ」

そっか、と、瞳子は相づちをうつ。

「つまり、アンタがそれを持つのは、鬼に金棒、みたいなモンなのね?」

「っ……、ああ、言い得て妙だな。俺としては盾矛(たてほこ)のつもりでいたが」

「もうっ、茶化さないでよ。
それで……アンタは、そのお祖父(じい)様───尊臣さんだっけ? 達の勝手な話し合いで人として育てられてきて……なのに、また、“神獣”やれって言われたの?」

ムッとした顔で、瞳子は確認してきた。理不尽だと、思いきり顔に書いてある。

虎太郎は、自分の心情を代弁するかのような彼女の表情に()やされ、気安い口調で話の先を継いだ。

「そうだ。イチが、“神獣ノ里”からの使者として俺の所へやって来た。隣国“上総ノ国”の代替わりとして、俺に白羽の矢が立ったとな」

「代替わり?」