「なんか、こう言っちゃなんだけど“花嫁”の要望? ワガママ? を、そんなにあっさり叶えちゃうとこなの? “()()”って」

少し怖いような気がして、瞳子があえて意地悪な質問をすると、セキは面白そうに噴きだした。

「まぁ、そうだな。瞳子の言いたいことも解るが……。
“神獣”は、“花嫁”の願いを叶えるのが存在意義らしいからな。
俺も正直なところ、ソレはどうなんだと思わなくもなかったが」

そこでセキは、瞳子を正面から見据え、得意げに笑った。

「いまは俺も、他の“神獣”が無理を通してでも“花嫁”の願いを叶えたかったと思う気持ちが、よく、解る」

自らの言葉をかみしめ含むように言うセキに、瞳子は思わず咳払いをして、彼から視線をそらす。

「話、進めてくれる?」
「ああ、悪かった」

くくっ……と、のどの奥で笑ったあと、セキは立ち上がり、部屋にあった文机(ふづくえ)から筆と(すずり)、巻かれた和紙を手にした。瞳子との間でそれを広げる。

「まず、この“陽ノ元”という世界の成り立ちだが───その昔、この国を統治した女の(みかど)が、この“陽ノ元”にある国々に“神獣”と“国司”を遣わしたらしい。