あまり深く考えず、白狼の追手から逃れること、元の世界に帰ることだけを優先して、言葉にあるものの正体を突き詰めてこなかった。

(ああ、どうしよう……考えれば考えるほどワケ解かんなくなってきた……)

そもそもここは“陽ノ元”なる異世界。瞳子の知る常識など通用しないのは確かだ。

(そうよね……。ネズミは話すし、頭にケモ耳生えるし、龍の背に乗って空飛べるしね)

うん、と、瞳子は自分のだした結論にうなずいた。

(怖いけど……、本当は、イヤだけど)

きちんと、セキと話をするべきだろう。
それがたとえ、裏切られる結末を迎えるのだとしても、ここでグダグダ考えているよりはマシだ。

(よし、そうと決まれば)

瞳子は障子を開け、部屋の外に出た。