予想外の返答だったのか、ぽかんとした顔でセキが瞳子を見上げてきた。

「私……アンタにもイチにも……まぁイチには当然かも知れないけど、でも、アンタに対してだけは、いろいろ失礼な態度だったと思う。
ごめんなさい!」
「いや、俺は別に気にしてないし、むしろ瞳子の態度は可愛かっ」
「だから! ちゃんと、謝りたかったの!
それで……その、謝るだけじゃなくて、私にできることなら、してあげたいと、思って」

途中、セキの見当違いな瞳子の評価は聞かなかったこととし、瞳子は、龍の背から飛び降りる。
よろめいて、すかさずセキの腕に抱きとめられると、礼を言って離れ、頭を下げた。

「本当に、ごめんなさい」

頭上で、セキが息をのんだのが分かった。顔を上げてくれ、と、かすれた静かな声がかかる。

一拍置いて、瞳子はセキを見上げ、ひと息に告げる。

「その代わり、私でできることなら、なんでも言って。
その……恋仲? の演技は、あんまり上手くできないかもだけど、なるべくそう見えるように、努力するわ」