セキの……赤い“神獣”の“花嫁”になることを承諾するための条件をつけた。

(だからセキは、私が同行を断っても構わないって思ってるんだ)

ここで瞳子が、萩原家への同行を───恋仲としての同行を拒んでも、きっとセキは嫌な顔ひとつせず、瞳子を屋敷に連れ戻してくれるだろう。 
そして、約束の期日には、瞳子を元の世界に送りだしてくれるはずだ。

白狼(はくろう)からの追手も、返り討ちにしてくれるはず)

だが。

(私、は……本当に、それでいいの?)

半月とはいえ世話になる者に対し、何もせずにのうのうと暮らしたうえで、礼だけ言って帰ればいいのか。

(そんなの、人として駄目じゃない?)

それ以上に、セキは自分の損得勘定抜きで、瞳子を助けてくれた恩人でもある。

(うわ、なんか……私、このまま断ったら最低な人間な気がしてきた)

「瞳子、心苦しいと思っているのなら、それは違う。それとこれとは話が別だ」
「違うわよ!」

あくまでも瞳子の想いを優先しようとするセキに対し、瞳子はキッパリと否定する。

「これは……そう、罪滅ぼしなの!」
「罪滅ぼし? なんの?」