「えっ、と、じゃあ、失礼します、、」


ぎこちない返事をしながら氷雨くんの前の席に座る。


改めて近くで見る彼は本当に綺麗な顔立ちをしている。
透き通った鼻に薄い唇。
真っ直ぐなクセのない黒髪で吸い込まれそうな茶色い瞳は1度見つめられたら逃げられないと悟ってしまうほど。




「しぐれって雨?」

「え?」

「漢字。時に雨でしぐれ?」

「あ、紫に呉服屋の呉、です」

「ふーん。雨じゃないんだ」



氷雨くんは、女子たちから人気でよく告白されているのを見かける。男友達もいるけど基本1人行動でアンニュイな雰囲気を漂わせている。
そんな遠い存在だと思っていた人となんでこんな状況で話してるんだろう。ふわふわした感じで現実にいる感覚がない。
夢を見てるみたいだ。