その後、蒼井先輩はサッカー部のキャプテンで、イケメンなだけじゃなく、やさしくて頼りになると学校中で話題のモテ男子だということがわかった。

 蒼井先輩にとって、あんな人助けは日常茶飯事のことで、わたしのことなんか、きっともう覚えていないだろうけど。

 それでも、蒼井先輩に助けてもらったときのことは、わたしにとって、忘れられない思い出。


 そんな蒼井先輩のお役に少しでも立ちたくて、思いきってサッカー部のマネージャーになったんだ。

 マネージャーの先輩たちは、わたしが普段絶対に関わることのないような、キレイで華やかな人たちばかりで。

 日陰で静かに過ごすことをモットーとしているような地味なわたしのどこにそんな勇気があったんだろうって、今になって思う。

 当然、蒼井先輩は、わたしのことなんか覚えていないみたいだったけど。


 そりゃあそうだよね。人目を引くほどの美人ならまだしも、こんな地味でなんの特徴もないわたしのことなんか、覚えていなくて当然だ。

 いや、むしろ忘れてくれていてよかった。

 だって、『定期なくしたって泣きそうになってて、実はカバンの中にちゃんと入ってた間抜けなヤツ』なんて覚えられていたら、恥ずかしすぎるし!


 ……なんて、蒼井先輩との思い出に浸っている場合じゃない。

 慌てて、Uターンしかけたとき——。


「三崎?」