「なにこれ~。こんなことして、部員の気を引こうとしてんの、バレバレなんだけど」

「ってかさ、こんなに観察されてメモられてるって知ったら、普通にドン引きでしょ」


 人数の多いサッカー部員全員を早く覚えたくて、それぞれの特徴やポジションを書き込んだ『部員ノート』を作ったの。

 そのうち、その日よかったところや悪かったところなんかも書き込むようになって。


 誰かに見せるつもりなんか、全然なかった。

 けど、言われてみれば、そうだったかも。

 わたしだって、自分のことを密かにメモられていたら、気持ち悪いって思うかもしれない。


 今までの自分を変えようと、思いきって飛び込んだ世界でも、結局うまくいかなかった。

 いっつもそう。よかれと思ってやったことが、おせっかいだったり、『いい子』と思われるためにやっているように見られたり。

 だったらもういっそマネなんか辞めてしまおうと、顧問の先生のところへ行く途中で、わたしがサッカー部のマネージャーになろうと思ったきっかけになった蒼井先輩と会ってしまうなんて。


 決意が揺らいでしまいそう。

 マネじゃなくなったら、わたしなんかその他大勢の女子の一人になって、蒼井先輩に認識すらされなくなってしまう。

 まあ、今でも女子マネの一人としか思われていないだろうけど。