先輩たちの目が怖い。

 ぺこっと頭を下げると、わたしは足早にその場を立ち去った。

 そのまましばらく歩いてから立ち止まると、空き教室の扉に背中を預ける。


 また余計なことを言っちゃったかな。

 でも、もう辞めるって決めてるし。このくらい、今さらどうってことない。

 はーっ、と深く息を吐いてから、もう一度歩き出そうとしたとき——。

「三崎」

 冷たい声で名前を呼ばれ、声の方を振り返る。

 案の定、二年のマネの先輩たちが怖い顔で立っていた。


「さっきのどういうつもり? 予定もちゃんと覚えてないあたしらのこと、バカにしてんの?」

「別に予定覚えてたからって、偉いわけじゃないし。蒼井先輩に取り入ろうってのバレバレ」

「いちいち出しゃばんじゃねーよ」


 わざわざそれを言うためだけに追いかけてきたの?

 どれだけ暇なんだろ、この人たちは。

 この人たちの言葉に傷つくのが、だんだんバカらしくなってきた。


「……そうですね。選手が競技に集中できるようにお手伝いするのが、マネージャーの仕事ですから、特別なことをしたとは思っていません」

 ぐっと先輩たちを見据えて言い返す。