激しい雨が、いくつもの大きな水溜りのできた土のグラウンドに打ち付け、泥を跳ね上げている。
梅雨なんだから仕方ないってわかってはいるけど、これで何日目だろう。
今日の部活も、休みになりそうだ。
これから部活——サッカー部のマネージャーを辞めに行くわたしには、関係のないことだけど。
あ……。
渡り廊下の手前で、わたしはピタリと足を止めた。
渡り廊下の真ん中あたりで、手すりにもたれかかるようにしてぼーっとグラウンドを眺めている男子が一人。
わたしが今、一番会いたくなかった人——サッカー部キャプテンの蒼井悠斗先輩だ。
長い睫毛が目許に影を落とし、なんだか憂いを帯びている。
練習中も、試合中も、いつだって太陽みたいな明るさで、みんなの先頭を走っているような人なのに。
いったいどうしたんだろう。
こんな物憂げな姿も、それはそれでカッコよく見えてしまう蒼井先輩だけど、やっぱりいつもみたいに笑顔でいてほしい、なんて自分勝手なことを思ってしまう。
いけない。蒼井先輩に気付かれないうちに、Uターンしなくっちゃ。
職員室には、別のルートで行けばいい。
どうせわたしでは、蒼井先輩を元気づけることなんかできないんだし。
それに、万が一サッカー部の女子マネの先輩たちに、蒼井先輩と二人きりでいるところなんか見られたら、また何を言われるかわからない。
この前、わたしが密かにつけていた『部員ノート』を、たまたま見られてしまったときのことを思い出して、胸がぎゅっと苦しくなる。