「ごちそうさまでした」



くつくつと煮える湯の音にそっとまぎれた2つの声。


涙でぐしょぐしょになりながらかけ蕎麦を食べた羽生先輩。
その様子が心配で心配でたまらなかった私。


もし店主がいたらかなり不審な2人組に思われていただろう。


屋台をあとにした私たちは、果てのない道を歩き始めた。


ふいに振り返る。


屋台の行灯がゆっくりと消えていくのが見えた。


羽生先輩の言っていたとおり、私のために現れてくれたんじゃないのか。


だとしたら優しい蕎麦屋さんだ。
いつかまた会えたらお礼を言わないと。