「えっ、は、羽生先輩?」 慌てて丼を置く。 先輩が、泣いた? 一方の羽生先輩は、私に言われて初めて気づいたかのように、「あぁ」と親指の腹で涙を拭った。 のんきにも程度というものがある。 スカートのポケットをまさぐった。 しかしなにもない。 舌打ちしそうになるのをこらえ、どうしたものかと焦った。 羽生先輩は、この優しい人は いつも笑っていればいいんだ。 笑っていてほしい。 泣かれたら胸が痛くてたまらなくなる。