静かに箸を持った。 その際ふと、隣の男を見やる。 美味しそうに幸せそうに蕎麦を口に含む姿。 あの世に理屈など通用しないんだ。 どうせ どうせ。 羽生先輩の横顔を見ていたら、なんだか目の前の事象がどうでもよくなってきた。 「いただきます…」 丼を持って、出汁を啜る。 舌に染み入る温かさ。 誰を咎めることもない 優しい味がした。