驚いた。


暖簾の中には麺と汁を煮込むだけの機械があるだけで、誰一人として人がいない。


漂うものは湯気だけ。
それなのに、テーブルの上にはすでに二人分のかけ蕎麦が置かれていた。


空の色に隠れてしまいそうな行灯がとろとろと揺れている。



「……」


「永遠ちゃん食べないの?冷めちゃうよ」



羽生先輩は手を合わせてさっさと食べ始めてしまった。


そんな彼を見ながら、得も言えぬ恐怖が込み上げてくる。