「蕎麦だって!永遠ちゃんお腹空いたって言ってたでしょ。食べていこうよ」


「いや…お金ありませんし」


「大丈夫だよ。ほら、値段なんて書いてないし」


「そういう問題じゃないでしょう」



倫理観とか、そういうのものは無いのだろうか。


蕎麦を作るにもお金がかかる。
それを思うと無銭飲食なんてできない。


羽生先輩の存在まるごとに違和感をおぼえた。


果たしてこの人はこんなに軽い人だったろうか?



「永遠ちゃん、ここはあの世だよ」



もやもやとする思考に、羽生先輩の声が落ちる。




「もうなにも考えなくていいんだ」




それだけ言うと、一足先に暖簾をくぐっていってしまった。