藍が今日、荷物を運んでいたときに怪我をした手首を応急処置してくれたときはずっと、心臓の音がうるさくて仕方がなかった。

 藍に聞こえてしまっているんじゃないか。

 そう思うと気が気じゃなかった。



 「先輩、これはあくまで応急処置です。今日中は安静にすることと、時間を見つけて保健室に行ってくださいね。約束ですよ?」



 そんなかわいいことを言ってくれれば、約束しないわけもなく。

 俺はほとんどなにも考えずに約束していた。



「わ、わかった。約束する。なんか、いろいろありがとう。助かった」



 そういうと、藍は花が咲いたような笑顔で頷いた。

 その笑顔に数秒見とれ、自分自身の心に気づく。

 

 ___俺は藍のことが好きだ。



 こんな一瞬で惚れてしまうなんて。

 俺は本当に馬鹿だと自分でも思う。

 だけど、このくらいの温かさが心地よくて、気持ちよくて仕方がなかった。