藍が許しても、俺が許さない。



 「朝火、さん」



 「うん?」



 藍がゆっくり、言葉を紡ぎ始めたので、耳を傾ける。



 「私、歌詞が完成して。届けようと、思ったんです。だけど」



 確かに、藍の手には歌詞ノートと書かれている、ノートが抱えられている。

 歌詞が完成して、きっと、すぐに届けてきてくれようと思ったんだろうな.......。



 「知らない女子生徒に、掃除を手伝ってほしいって、言われて。私、土曜日なのに掃除があるのはおかしいなって、ちょっと思ったんですけど、ついていってしまいました。すると、やっぱり、突き飛ばされて、教室の鍵を閉められて」



 「っ.......!」



 その女子生徒とやらが許せない。

 純粋な藍を引っ掛けるなんて。



 「そんなことがあったんだな......つらかったよな」



 「いいえっ。私が掃除があることを疑わなかったのがいけないんです。スマホも家に置いてきてしまったし、朝火さんの連絡にも気付けなかったし......。」



 スマホを置いていったから、連絡に気づかなかったのか。