「菜穂は優しいね、私だったらやだって言っちゃうわ」
「そもそも大冴くんは興味無いでしょ」
8月に入りミスターコンはSNS審査に入っていた。
塾の机でスマホを見ていると「あの…」と話しかけられた。
顔を上げると去年も夏期講習に参加してましたよねと聞かれた。
「はい」
隣に座っていいですか?と言われて空席だったので断る訳もいかずどうぞと言ってしまった。
「僕、大野といいます」
「和田です」
挨拶をしたところで授業が始まり会話は終わった。
「じゃあ」と菜穂は授業が終わると席を立ち、大野くんが話したかった雰囲気には全く気づかなかった。
大野くんは菜穂の後ろ姿を見ていた。
短期講習だけ参加しているあの子と話してみたかった。
「和田さん、か…」
可愛かったな…
次の日授業が終わると駅まで一緒にいいかなと大野くんに声をかけられた。
まあ帰る方向だし別にいいけどと言って駅まで歩く。
大野くんは菜穂とは方向が反対だったのでホームで別れた。
菜穂はお菓子作りがしたくて短期講習だけしか申し込みしてないけど、受験だし、考えないといけないかなぁ…