永遠とまっすぐ目が合ったのは、言葉通り、未開封の頭痛薬を差し出された時だった。二回目の厚意だ。透馬の勘違いで弾いた一回目とは異なり、二回目はその手を弾く理由などなかった。睨まれていると感じていた永遠の眼差しも、先入観を抱いていたことでそう見えていただけで、思い込みをなくした今となっては、睥睨されているなどとは到底思えなかった。

 雨の日の頭痛の辛さを共感してくれている。偶然隣の席になっただけのただのクラスメートに違いないのに、無視することなく気にかけてくれている。透馬のことなど何も知らないだろうに、薬を渡して手を貸そうとしてくれている。永遠は謎に包まれた人ではあるが、今現在透馬に向けている綺麗な瞳からは純粋な慈悲が感じられた。きっと最初からそうだった。永遠は最初からそうだったのだ。

 永遠との間に壁を作っていたのは紛れもなく自分の方だったのだと、透馬は申し訳なさに視線を落とした。永遠が指先で持っている頭痛薬に、ゆっくりとピントが合わさる。言葉も行動も微妙に怠そうではあるが、他人を思いやることのできる永遠の優しさを知った透馬は、頭ではない別の箇所、胸の奥の辺りが締め付けられていることにふと気づいた。差し出されている新品の頭痛薬に、永遠の指先に触れないよう変に意識して受け取った自分の挙動に、透馬は人知れず身体を熱くさせてしまう。これがどういった類の感情なのか、透馬は知っていた。

「ありがとう。なんか、やばいな。俺、漆原のこと、好きになりそう」

「急展開すぎて意味が分からない。しかもそういうの、好きになってから言うもんじゃないのかよ」

「迷惑?」

「いや別に、迷惑とかではなくて」

「だったら問題ないな。多分俺、漆原のこと本気で好きになると思う。だから、これは告白の予告」

「告白の予告は告白でしかないし、せめて天気の良い日にして」

「その反応は凄く期待できそう」

「……早く飲めよ」