今日はずっと雨の予報だった。重たく叩きつけるような、とまではいかないが、決して軽いとも言えない大きな雨粒が、広範囲に大量に落ち続けている。朝から昼になっても、予報通りにその調子だった。

 悪天候の外を見て、藤野透馬(ふじのとうま)は思わず顔を顰めた。天気など関係なくいつでもテンションの高い友人たちと、透馬も普段通りのテンションで会話を交わしつつも、今日ばかりは、いや、この時期に限っては、いや、もっと言えば、雨の日に限っては、時折眉間に皺が寄ってしまう。何度か友人に気づかれ、顔が険しい、などと突っ込まれてしまったこともあったが、透馬は毎回へらへらと笑って誤魔化していた。顔が険しくなってしまう理由など隠すようなことでもないが、わざわざ口にするようなことでもない。

 平気なふりをして友人と一緒に笑いながら、バレないよう、髪を触るような何気ない仕草で頭を押さえる。ズキズキと痛んでいた。朝からずっとだ。雨が降る前だったり、今みたいに降っている状況だったりする時は、いつも頭痛がするのだった。柄にもなく、透馬は頭痛持ちだった。今に始まったことではないものの、相変わらず悩ましい問題だ。

 雨による頭痛が、基本的に能天気な透馬の唯一の悩みの種だった。しかしながら、最近になってその種が一つ増殖していることに、透馬は気づいてしまった。左隣の席から時々感じる視線だ。透馬を観察するような、酷く目つきの悪い鋭い眼差しを、その席に座る男子生徒から向けられることがあるのだ。いずれ拳で喧嘩をするようになるかもしれないと、透馬は人知れず警戒し、闘争心を燃やしていた。売られた喧嘩は買う主義だった。